不動産を売買したとき
不動産を購入したときには、その不動産を自分の名義にする所有権移転登記手続きが必要になり、住宅ローンを利用している場合には購入した不動産に抵当権を設定する抵当権設定登記手続きが必要となります。
また、購入予定の不動産に、抵当権等が設定されている場合、その権利を消す抵当権抹消登記も同時に行わなければなりません。
登記手続きの流れ
①不動産の購入につき、売買契約を締結
不動産仲介業者などの媒介により購入物件を決定し、売主さんと買主さんとの間で売買契約を締結します。このとき手付金の授受を伴うことが一般的です。 住宅ローンを利用する場合は金融機関との間で金銭消費貸借契約や抵当権等の設定契約を取り交わします。
②司法書士へ依頼
不動産取引を安全に執り行うために、代金決済の日に司法書士が立ち会うのが通例となっています。決済現場では司法書士の立会いのもと、売買代金の支払いと同時に書類や鍵等の引渡も行われ、その日のうちに司法書士が法務局へ名義変更の登記申請をします。 従来、決済の立会いと登記手続は、不動産仲介業者や金融機関が指定する司法書士が執り行うことがほとんどでしたが、近時では、買主さんがご自分で選んだ司法書士に依頼をするケースが増えてきています。
③必要書類の収集・作成および売主・買主への意思確認
決済を担当する司法書士が不動産登記の申請準備を行います。
④決済日(残金決済の立会い)
決済の立会い時に司法書士は、売主さんと買主さんのご本人確認と真にその不動産を売買する意思のあることを確認するとともに、売買物件の確認、権利証が本物か、売主さんの印鑑証明書は期限内か、印鑑証明書と登記簿上の住所氏名が一致しているか、売主さんの委任状に押印された印鑑が印鑑証明書と一致しているかなどの確認を慎重に行います。 登記書類の確認等が終了すると、売買代金等の支払い、引渡が行われます(金融機関から融資を受けて購入する場合は、融資が実行されます)。
⑤登記申請
決済後、法務局に直ちに不動産登記を申請します。
⑥登記完了
登記申請から登記が完了するまでは、法務局の事務処理期間として数日~2週間程度かかります。登記完了後、当事務所からご依頼者に登記事項証明書や登記識別情報などを交付いたします。
仲介業者を介さず、個人間で直接不動産を売買する場合
親族間や知り合い同士で直接不動産を売買される場合には、登記手続きに限らず、売買契約書の作成や住宅用家屋証明書の取得、固定資産税等精算金額の算出など、必要となる手続を一括でサポートさせていただきます。お気軽にお問い合わせください。
必要書類
【売主様】
- 登記原因証明情報(当事務所で作成します)
- 登記識別情報又は登記済証
- 印鑑(実印)
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 固定資産評価証明書
- 委任状(当事務所で作成します)
- (法人の場合)代表者事項証明書又は会社登記簿謄本
- 本人確認書類(原則として運転免許証など顔写真付きのものが必要)
【買主様】
- 住民票
- 印鑑(認め印でもかまいません)
- 委任状(当事務所で作成します)
- (法人の場合)代表者事項証明書又は会社登記簿謄本
- 本人確認書類(原則として運転免許証など顔写真付きのものが必要)
住宅用家屋証明書
下記の要件を満たす場合は、市区町村長発行の住宅用家屋証明書を添付すれば、登録免許税額の軽減が受けられます(所有権移転登記:1000分の20→1000分の3、抵当権設定登記:1000分の4→1000分の1)。
- 購入する不動産が自己居住用の住宅であること
- 建物の床面積が、登記簿上50㎡以上であること
- 建物の築年数が、鉄筋コンクリートで25年以内、木造で20年以内であること (但し、耐震の証明書の添付がある場合は築年数の要件は緩和されます)
権利証(登記済証や登記識別情報)を紛失した場合
権利証は再発行することはできませんが、司法書士による本人確認情報制度や事前通知制度を利用すれば、登記申請をすることができます。
- 司法書士による本人確認情報
本人確認情報とは、権利証・登記識別情報に代わる書類で、不動産申請代理人である司法書士が本人と面談し、本人のパスポートや運転免許証等の身分証明書の提示を受けて本人であることを確認して、その面談日時・場所、所定の確認方法による本人確認をした旨等、司法書士がその責任において証明するものです。 - 事前通知制度
権利証がない状態で登記申請書に権利証を提供できない理由を記載して、そのまま登記申請を行います。その後、法務局から本人限定受取郵便で「登記申請があった旨」の通知(事前通知)が届きますので、この通知書に記名し実印で押印して返送するというもの。返送をしなかった場合には登記申請が却下され、買主へ所有権を移転することができなくなってしまうという大きなリスクがあることから、不動産売買では利用されません。
登記簿上の住所と現在の住所が違う場合
売主さんの現在の住所と、登記簿上の住所が違う場合には、所有権移転登記に先立ち、所有権登記名義人住所変更の登記が必要となります。その際、住所変更の経緯が分かる住民票もしくは戸籍の附票が必要となります。
ただし、DV被害者やストーカー被害者など、現住所が知られたくない事情がある方が登記義務者(売主さん)となる場合については、住所変更の登記をしなくてもよい、との取扱いを認める先例(平成25年12月12日付法務省民二第809号)があります。
対象となるのは①配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律第1条第2項に規定する被害者、②ストーカー行為等の規制等に関する法律第7条に規定するストーカー行為等の相手方、③児童虐待の防止に関する法律第2条に規定する児童虐待を受けた児童等として、住民基本台帳事務処理要領第6の10の措置を受けている者で、所有権の移転のほか、抵当権その他の権利の移転の登記についても同様に取り扱って差し支えないものとされています。
この際、市区町村長等が作成した住所の変更があったことを証する書面と、上記支援措置を受けてることを証する書面を添付する必要があります。
海外居住のため印鑑証明書を提出できない場合
海外在住のため日本に住所がなく、印鑑証明書の交付を受けられない場合には、印鑑証明に代えてサイン証明(署名(および拇印)証明書)を提出すればよいとされています。
サイン証明とは、日本に住民登録をしていない海外在住者に対し、日本の印鑑証明書に代わるものとして日本での手続きのために発給されるもので、申請者の署名(および拇印)が確かに領事の面前で証明されたことを証明するものです。この際、領事館には、本人確認資料として、証明を受けたい書類の他に、①パスポートと②海外居住であることの証明書を持参する必要があります。