こんにちは。司法書士の辻です。

7月に入ると、そろそろお盆の帰省を考え始める方も多いのではないでしょうか。久しぶりに家族が一堂に集まるお盆は、実は相続について話し合う絶好のタイミングです。

「縁起でもない」と思われるかもしれませんが、相続の準備は元気なうちに、そして家族みんなが顔を合わせている場でこそ進めやすいもの。いざ相続が発生してから「そんな話、聞いていない」「財産がどこにあるかわからない」というトラブルは、決して他人事ではありません。

今回は、お盆に家族で共有しておきたい相続の基本知識と、手続きの流れについてわかりやすくご説明します。大阪・和歌山を中心に多くの相続案件をお手伝いしてきた経験をもとに、実際のトラブル事例も交えてお伝えします。


お盆こそ相続を話し合うチャンス

お盆は年に一度、離れて暮らす家族が集まる貴重な機会です。相続問題が複雑化する最大の原因のひとつは、「事前の話し合い不足」です。

特に親御さんが高齢になってきた場合、以下のような点を家族間で確認しておくだけで、いざというときに大きな差が生まれます。

  • 財産(不動産・預貯金・有価証券など)のおおまかな内容と所在
  • 遺言書があるかどうか
  • 葬儀や墓に関する希望
  • 誰が中心になって手続きを進めるか

「うちは仲がいいから大丈夫」と思っていても、相続が発生すると感情的なすれ違いが起きやすくなります。お盆の集まりを「終活・相続トーク」のきっかけにしてみてください。


相続手続きの基本的な流れ

相続が発生(被相続人が亡くなった)後は、概ね以下の流れで手続きを進めます。期限が定められているものもあるため、早めに全体像を把握しておくことが大切です。

ステップ内容目安期限
①相続人の確認戸籍を取り寄せ、法定相続人を確定するできるだけ早めに
②相続財産の調査不動産・預貯金・負債などをリストアップできるだけ早めに
③相続放棄の検討負債が多い場合は家庭裁判所へ申述3ヶ月以内
④遺産分割協議相続人全員で話し合い、分割方法を決める相続税申告までに
⑤相続税の申告・納付遺産が基礎控除を超える場合は必要10ヶ月以内
⑥相続登記不動産の名義変更手続き3年以内(義務)
⑦預貯金・株式等の名義変更金融機関ごとに手続きが異なる相続登記後が多い

①相続人の確認

まず、「誰が相続人なのか」を法律に基づいて確定します。配偶者は常に相続人となり、子、父母、兄弟姉妹の順で相続権があります(民法第887条〜第890条)。

必要な戸籍は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、各相続人の現在の戸籍謄本。これが意外と手間がかかり、複数の市区町村に請求が必要なケースもあります。(相続人が取得する場合は最寄りの役所で一括で請求可能で便利です)

②相続財産の調査

不動産は法務局で登記事項証明書を取り寄せるなどの方法で確認します。預貯金は各金融機関に残高証明書を請求します。負債(借金・保証債務など)も財産の一部ですので、見落とさないよう注意が必要です。

③遺産分割協議

相続人全員が参加し、誰が何を引き継ぐかを話し合います。まとまった内容は「遺産分割協議書」として文書化し、全員が署名・実印を押印します。この協議書は、不動産の相続登記や金融機関の手続きに必要になります。

全員の合意が前提なので、一人でも反対すると手続きが止まってしまいます。日頃から家族関係が良好でも、財産が絡むと意外な対立が生まれることもあります(本当に実際にあります…)。


2024年4月から始まった「相続登記の義務化」

2024年4月1日より、不動産の相続登記が義務化されました(不動産登記法第76条の2)。

それ以前は「登記は任意」でしたが、今後は相続を知った日から3年以内に相続登記を行わないと、10万円以下の過料(罰則)の対象になります。

さらに重要なのは、2024年4月以前に発生した相続についても義務化の対象となる点です。つまり、何十年も前に亡くなった親や祖父母名義の不動産がある場合も、2027年3月31日までに相続登記を完了させる必要があります。(後1年もありません)

「実家の土地が祖父名義のまま…」という方は、早急にご対応ください。放置すると時間が経つにつれ相続人が増え、手続きがより複雑になります。


実際の相続トラブル事例

事例1:兄弟間の不動産をめぐるトラブル(大阪府・60代男性)

Aさんは、和歌山県に住む父親が亡くなったあと、兄と2人で相続手続きを進めようとしました。父名義の自宅(和歌山市内)と預貯金500万円が主な財産でした。

長男のAさんは「実家は売却して現金を分けよう」と主張。しかし兄は「実家は思い出があるから売りたくない。自分が住む」と譲りません。協議は平行線をたどり、半年以上が経過。その間、実家は誰も住まないまま固定資産税だけが発生し続けていました。

ご相談をいただき、「代償分割」という方法を提案しました。兄が実家を取得する代わりに、Aさんへ代償金(法定相続分に相当する金額)を支払うという合意です。最終的に双方が納得し、手続きは円満に解決しました。

ポイント:遺産分割には「現物分割」「換価分割」「代償分割」などの種類があります。状況に応じた方法を選ぶことが、円満解決への近道です。

事例2:相続登記を放置して起きた問題(和歌山県・70代女性)

Bさんは、30年前に夫が亡くなった際、相続登記を「費用がかかるから」と後回しにしていました。その後、息子夫婦と同居するため自宅を売却しようとしたところ、名義が亡夫のままで売れないことが判明。

さらに、亡夫の兄弟(相続権のある傍系血族)がすでに数名亡くなっており、その子どもたちまで相続人になっていることがわかりました。協議書に署名をもらう必要がある相続人は合計9名。連絡が取れない方もおり、解決まで1年以上かかりました。

ポイント:相続登記は「後でやればいい」では済まない時代になっています。相続発生後はできるだけ早めに専門家に相談することをお勧めします。


よくあるご質問(Q&A)

Q1. 遺産分割協議書は自分で作れますか?

A. 法律上は、相続人全員が署名・実印を押印していれば書式に決まりはなく、自分で作成することも可能です。ただし、記載内容に漏れや誤りがあると法務局や金融機関で受け付けてもらえないことがあります。特に不動産が絡む場合や相続人が多い場合は、司法書士に依頼することをお勧めします。

Q2. 相続放棄はどんなときに使いますか?

A. 被相続人に多額の借金があり、プラスの財産より負債が多い場合に有効です。相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。家庭裁判所への申述が必要で、相続を知った日から3ヶ月以内という期限があります。期限を過ぎると原則として放棄できなくなるため、注意が必要です。期間延長等もできますので諦めずにご相談ください。

Q3. 親が「遺言書を書いた」と言っていますが、どこを確認すればいいですか?

A. 遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は法務局の「遺言書保管制度」を利用している場合があります。公正証書遺言は公証役場に原本が保管されており、全国どこの公証役場でも照会できます。また、法務局の遺言書保管制度に預けた遺言書は「遺言書情報証明書」を取り寄せることで内容を確認できます。


まとめ:お盆の帰省で、ぜひ「もしもの話」を

相続は、誰にでも必ず訪れる問題です。しかし「縁起が悪い」「まだ早い」と後回しにした結果、家族間でトラブルになるケースは後を絶ちません。

お盆の帰省は、親御さんの意向を確認したり、家族で財産の話題を自然に切り出したりできる貴重な機会です。難しい法律の話でなくても、「遺言書は書いてある?」「通帳はどこにある?」という一言から始めてみてください。

大阪・和歌山を中心に、当事務所では相続に関するご相談を数多くお受けしています。また、東京をはじめ遠方にお住まいの法人オーナーや事業主の方のご相談にも対応しております。お気軽にご連絡ください。


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