2026年2月2日、商業登記規則の改正が施行され、土日祝日・年末年始でも会社の設立日として登記できるようになりました。

これまで「1月1日を創業記念日にしたい」「大安が土曜日だけど、その日に設立したい」という希望は叶いませんでしたが、今後は可能になります。

本記事では、この改正の内容と実務上の注意点、さらに税理士の先生方にも押さえておいていただきたい周辺事項について解説します。


第1章 改正の概要

1-1 これまでの制度

従来、会社の設立日は「法務局が設立登記申請を受け付けた日」でした。

法務局の業務取扱時間は、平日の午前8時30分から午後5時15分まで。土日祝日・年末年始(12月29日〜1月3日)は閉庁しています。

そのため、土日祝日・年末年始を会社設立日にすることは不可能でした。

従来の制度
設立日 = 法務局が登記申請を受け付けた日
土日祝日・年末年始は受付不可
したがって、土日祝日・年末年始は設立日にできない

1-2 改正の内容

2026年2月2日施行の商業登記規則の改正により、一定の要件を満たせば、土日祝日・年末年始(行政機関の休日)を会社設立日として登記できるようになりました。

改正後の制度
一定の要件を満たせば、行政機関の休日を設立日にできる
1月1日(元日)を創業記念日にできる
土曜日の大安を設立日にできる

1-3 対象となる法人

この特例が適用されるのは、「登記が成立要件となる会社・法人」です。

対象となる法人
株式会社
合同会社
合名会社
合資会社
一般社団法人
一般財団法人
医療法人
その他、設立の登記により成立する法人

第2章 特例を利用するための要件

2-1 4つの要件

休日を会社設立日にするためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

要件内容
① 登記が成立要件設立の登記により法人が成立する会社・法人であること
② 申請書への記載特例を求める旨および指定登記日を申請書に記載すること
③ 指定登記日が休日指定する設立日が行政機関の休日であること
④ 直前の開庁日に申請指定登記日の直前の開庁日に登記申請が受け付けられること

2-2 直前の開庁日に申請が必要

最も重要なポイントは、「直前の開庁日」に申請しなければならないという点です。

「事前に早めに出しておけばいい」というわけではありません。

【例1】2026年2月11日(建国記念の日)を設立日にしたい場合

  • 直前の開庁日:2月10日(火曜日)
  • 2月10日の午前8時30分〜午後5時15分の間に申請が受け付けられる必要あり

【例2】2027年1月1日(元日)を設立日にしたい場合

  • 年末年始休み:12月29日〜1月3日
  • 直前の開庁日:2026年12月28日(月曜日)
  • 12月28日の午前8時30分〜午後5時15分の間に申請が受け付けられる必要あり

【例3】2026年5月5日(こどもの日)を設立日にしたい場合

  • 5月2日(土)、3日(日・憲法記念日)、4日(みどりの日)は休み
  • 直前の開庁日:5月1日(金曜日)
  • 5月1日の午前8時30分〜午後5時15分の間に申請が受け付けられる必要あり

2-3 申請書への記載方法

登記申請書に以下の内容を記載する必要があります。

記載事項
特例を求める旨
指定登記日(休日を設立日にしたい場合の日付)

【申請書の記載例】

「登記すべき事項」欄に、会社成立の年月日として指定登記日を記載します。

「会社成立の年月日」令和9年1月1日

詳しい記載例は、法務省のホームページで公開されています。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00234.html

2-4 申請方法

申請方法に特段の制限はなく、以下のいずれでも可能です。

申請方法注意点
窓口持参確実に直前の開庁日に受け付けられる
郵送到達日が直前の開庁日になるよう注意(遅延リスクあり)
オンライン直前の開庁日の開庁時間内に到達・受付される必要あり

実務上は、窓口持参が最も確実です。郵送やオンラインの場合、到達のタイミングがずれるリスクがあります。オンラインの場合登録免許税の納税のタイミングも注意が必要です。


第3章 注意点

3-1 バックデート(日付の遡り)は不可

過去の日付を設立日にすることはできません。

例えば、2月12日に申請して「2月11日を設立日にしたい」と言っても、認められません。

必ず「事前」に申請し、「直前の開庁日」に受け付けられる必要があります。

3-2 申請に不備があると希望日に設立できない

登記申請書に不備があり、却下または取り下げとなった場合、当初予定していた日を設立日にすることができなくなります。

休日設立を希望する場合は、通常以上に書類の入念なチェックが必要です。

3-3 定款認証は事前に完了させておく

株式会社の場合、設立登記の前に定款の認証が必要です。

定款認証は公証役場で行いますが、公証役場も土日祝日・年末年始は閉まっています。

休日を設立日にする場合でも、定款認証は事前の平日に完了させておく必要があります。

手続きタイミング
定款認証設立日より前の平日に完了
設立登記申請設立日(休日)の直前の開庁日に申請

3-4 資本金の払込みも事前に完了

設立登記申請の添付書類として、資本金の払込みを証する書面が必要です。

払込みは、定款認証の前後どちらでも構いませんが、いずれにしても設立登記申請より前に完了させておく必要があります。


第4章 税務・社会保険への影響

4-1 設立届出の期限は「設立日」基準

会社設立後、税務署や都道府県税事務所、市区町村に法人設立届出書を提出する必要があります。

届出先期限
税務署設立日から2か月以内
都道府県税事務所都道府県による(例:東京都は15日以内)
市区町村市区町村による

設立日が休日でも、届出期限は「設立日」を基準に計算されます。

【例】2027年1月1日を設立日にした場合

  • 税務署への届出期限:3月1日(2か月以内)
  • 1月4日(仕事始め)から届出可能

休み明けからカウントすると、通常の平日設立より3〜4日間猶予が短くなる点に注意が必要です。

4-2 青色申告承認申請書の期限

青色申告の承認を受けるためには、設立日から3か月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。

設立日が休日の場合でも、この期限は「設立日」基準で計算されます。

4-3 社会保険の届出

社会保険(健康保険・厚生年金)の届出期限は、事実発生から5日以内です。

設立日を休日にした場合でも、届出期限は「設立日」から計算されるため、休み明けすぐに届出が必要になる場合があります。

4-4 消費税の免税期間との関係

資本金1,000万円未満の新設法人は、原則として設立1期目・2期目は消費税が免税になります。

この免税期間を最大限活用するには、設立日と決算日をできるだけ離すことがポイントです。

【例】3月決算の場合

設立日1期目の長さ免税期間
4月1日約12か月最大限活用
1月1日約3か月1期目が短い

休日設立で「1月1日」を設立日にできるようになりましたが、3月決算の場合は1期目が3か月になり、免税メリットを最大限活用できない点に注意が必要です。

4-5 法人住民税の均等割

法人住民税の均等割は、事業年度が12か月未満の場合、月割り計算されます。

1か月に満たない端数は切り捨てられるため、設立日を「1日」ではなく「2日以降」にすると、初年度の均等割が1か月分安くなるというテクニックがあります。

【例】

設立日初年度の均等割
4月1日12か月分
4月2日11か月分

この点は、休日設立でも同様です。「1月1日設立」にこだわると、均等割の節約効果は得られません。


第5章 新設型組織再編への活用

5-1 新設分割・株式移転も対象

この特例は、会社設立だけでなく、新設型組織再編(新設分割、株式移転)にも適用されます。

組織再編の種類特例の適用
新設分割○(新設会社の設立日を休日にできる)
株式移転○(持株会社の設立日を休日にできる)
吸収分割✕(効力発生日は登記日ではない)
吸収合併✕(効力発生日は登記日ではない)

5-2 4月1日・10月1日が土日でも対応可能

組織再編の効力発生日は、「4月1日」「10月1日」など、期首に設定されることが多いです。

従来は、これらの日が土日に当たると、効力発生日をずらす必要がありました。

今後は、4月1日や10月1日が土日でも、その日を新設会社の設立日(=組織再編の効力発生日)にすることが可能になります。

【例】2028年4月1日(土曜日)を新設分割の効力発生日にしたい場合

  • 直前の開庁日:2028年3月31日(金曜日)
  • 3月31日に新設分割の登記申請をすることで、4月1日を効力発生日にできる

第6章 活用場面

6-1 縁起の良い日に設立したい

「大安」「一粒万倍日」「天赦日」など、縁起の良い日に会社を設立したいというニーズは根強いです。

従来は、縁起の良い日が土日に当たると諦めるしかありませんでしたが、今後は休日でも設立可能になります。

【2026年以降の縁起の良い日の例】

日付曜日縁起
2026年3月8日日曜日天赦日+一粒万倍日
2027年1月1日金曜日元日(※この日は平日なので従来どおり)
2027年1月11日月曜日(祝日)成人の日+大安

6-2 記念日に設立したい

「結婚記念日」「誕生日」など、個人的に意味のある日を会社設立日にしたいというニーズもあります。

これらの日が土日に当たっても、設立日にできるようになりました。

6-3 1月1日を創業記念日にしたい

「会社の創業記念日を1月1日にしたい」というニーズは、特に多くあります。

従来は1月1日〜3日が年末年始休みのため不可能でしたが、今後は可能になります。

【1月1日を設立日にする場合】

  • 直前の開庁日:前年の12月28日(※12月29日〜1月3日は休み)
  • 12月28日に設立登記を申請

第7章 実務上のスケジュール

7-1 株式会社設立の場合のスケジュール例

【例】2027年1月1日(元日)を設立日にしたい場合

日程手続き
12月中旬まで定款の作成
12月中旬〜下旬定款認証(公証役場)
12月下旬資本金の払込み
12月28日設立登記申請(指定登記日:1月1日)
1月1日会社成立(設立日)
1月上旬登記完了、登記事項証明書の取得
1月上旬〜税務届出、社会保険届出、銀行口座開設

7-2 余裕を持ったスケジュールを

休日設立を希望する場合、書類の不備は致命的です。

却下や取り下げになると、希望日に設立できなくなります。

通常以上に余裕を持ったスケジュールで、入念に書類をチェックしてから申請することをおすすめします。


第8章 よくある質問(Q&A)

Q1. 休日を設立日にする場合、追加の費用はかかりますか?

A. いいえ、追加の費用はかかりません。登録免許税などは通常どおりです。

Q2. 合同会社でも休日設立は可能ですか?

A. はい、可能です。株式会社だけでなく、合同会社、一般社団法人なども対象です。

Q3. 郵送やオンラインでも休日設立の申請はできますか?

A. 可能ですが、直前の開庁日の開庁時間内に到達・受付される必要があります。郵送は遅延リスクがあるため、窓口持参が確実です。

Q4. 設立日を過去の休日にすることはできますか?

A. できません。バックデートは認められていません。必ず事前に申請する必要があります。

Q5. 定款認証も休日にできますか?

A. いいえ、定款認証は公証役場で行うため、公証役場の開庁日(平日)に行う必要があります。

Q6. 設立日が休日だと、届出の期限はどうなりますか?

A. 届出期限は「設立日」を基準に計算されます。休み明けすぐに届出が必要になる場合があるため、注意が必要です。

Q7. 1月1日を設立日にすると、消費税の免税期間はどうなりますか?

A. 決算日との関係によります。3月決算の場合、1月1日設立だと1期目が3か月になり、免税期間を最大限活用できません。消費税の免税を重視するなら、決算日から逆算して設立日を検討してください。詳しくは税理士にご相談ください。


第9章 税理士の先生方へ

9-1 顧問先への情報提供として

会社設立を検討している顧問先や紹介先がいらっしゃれば、この新制度についてご案内いただけると喜ばれるかもしれません。

「1月1日を創業記念日にしたい」「縁起の良い日に設立したい」といったニーズは、経営者の方に根強くあります。

9-2 税務上の影響を踏まえたアドバイス

休日設立が可能になったとはいえ、税務上のメリット・デメリットを踏まえた設立日の選定は引き続き重要です。

検討ポイント内容
消費税の免税期間決算日との関係で1期目の長さを調整
法人住民税の均等割1日ではなく2日以降にすると1か月分節約
届出期限休日設立だと猶予が短くなる場合あり
事業年度の設計繁忙期を避けた決算月の設定

9-3 司法書士との連携

休日設立を希望する場合、書類の不備は致命的です。

司法書士と連携し、定款作成から登記申請まで確実に進めることで、顧問先の希望を実現できます。

当事務所でも、税理士の先生方からのご紹介を多数いただいており、会社設立のサポートを行っています。お気軽にご相談ください。


第10章 まとめ

改正のポイント

ポイント内容
施行日2026年2月2日
内容土日祝日・年末年始を会社設立日にできる
対象株式会社、合同会社、一般社団法人など
要件直前の開庁日に申請、申請書に指定登記日を記載

注意点

注意点内容
バックデート不可過去の休日を設立日にすることはできない
直前の開庁日に申請早めに出しておくことはできない
書類不備は致命的却下・取下げになると希望日に設立できない
届出期限に注意休日設立だと猶予が短くなる場合あり
消費税の免税期間設立日と決算日の関係を検討

活用場面

場面
縁起の良い日(大安、一粒万倍日など)に設立したい
記念日(誕生日、結婚記念日など)に設立したい
1月1日を創業記念日にしたい
組織再編の効力発生日を4月1日(土日)にしたい

当事務所のサポート

当事務所では、会社設立の登記をサポートしています。

休日設立をご希望の場合も、スケジュール管理から書類作成、登記申請まで、確実に手続きを進めます。

税理士の先生方からのご紹介も歓迎しております。お気軽にご相談ください。


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件についてはご相談ください。 税務に関する事項については、税理士にご確認ください。