いわゆる商業登記簿(登記事項証明書)の見方|会社の登記簿の読み方を解説
取引先の会社情報を確認したいとき、会社設立や役員変更の手続をするとき、「登記簿謄本」が必要になることがあります。
商業登記簿(正式には「登記事項証明書」)には、会社の商号、本店所在地、役員、資本金などの情報が記載されています。
本記事では、会社の登記事項証明書の見方・読み方をわかりやすく解説します。
商業登記簿とは
商業登記簿とは、会社や法人に関する情報を記録した登記簿です。
現在は登記がコンピュータ化されているため、正式名称は「登記事項証明書」ですが、一般的には「登記簿謄本」「登記簿」「謄本」などと呼ばれています。
商業登記には、会社の基本情報を公示し、取引の安全を守る役割があります。誰でも手数料を払えば取得できるため、取引先の信用調査などにも活用されています。
登記事項証明書の種類
登記事項証明書には、いくつかの種類があります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 履歴事項全部証明書 | 現在有効な事項に加え、過去3年分の変更履歴も記載。最も一般的。 |
| 現在事項全部証明書 | 現在有効な事項のみを記載。過去の履歴は記載されない。 |
| 閉鎖事項全部証明書 | 閉鎖された登記記録(解散した会社など)の内容を証明。 |
| 代表者事項証明書 | 代表者の資格を証明する書類。 |
通常の取引や手続では「履歴事項全部証明書」を取得することが多いです。過去の変更履歴も確認できるため、会社の沿革を把握するのに便利です。
登記簿の構成
会社(株式会社)の登記事項証明書は、以下の項目で構成されています。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 会社法人等番号 | 会社を特定する12桁の番号 |
| 商号 | 会社の名前 |
| 本店 | 会社の所在地 |
| 公告をする方法 | 会社の公告方法(官報、電子公告など) |
| 会社成立の年月日 | 会社が設立された日 |
| 目的 | 会社の事業内容 |
| 発行可能株式総数 | 発行できる株式の上限 |
| 発行済株式の総数等 | 実際に発行している株式の数と種類 |
| 資本金の額 | 会社の資本金 |
| 株式の譲渡制限に関する規定 | 株式の譲渡に制限があるかどうか |
| 役員に関する事項 | 取締役、代表取締役、監査役などの情報 |
| 取締役会設置会社に関する事項 | 取締役会を置いているかどうか |
| 監査役設置会社に関する事項 | 監査役を置いているかどうか |
| 登記記録に関する事項 | 登記記録の作成日や移記の情報 |
※会社の種類(合同会社、合名会社、合資会社など)や機関設計によって、記載される項目は異なります。
各項目の見方
会社法人等番号
会社を特定する12桁の番号です。
法人番号(13桁)とは異なりますが、法人番号は会社法人等番号の先頭に1桁(チェックディジット)を加えたものです。
銀行振込や税務申告で使うのは13桁の法人番号の方です。登記事項証明書に記載されている12桁の番号と混同しないよう注意してください。
商号
会社の正式名称です。「株式会社○○」「○○株式会社」などと記載されます。
商号変更の履歴がある場合は、変更前の商号も(履歴事項証明書であれば)記載されます。
本店
会社の所在地です。
本店移転の履歴がある場合は、移転前の住所も記載されます。同一法務局管轄内での移転と、管轄外への移転では手続が異なります。
公告をする方法
会社が法定の公告(決算公告、合併公告など)を行う方法です。
| 公告方法 | 内容 |
|---|---|
| 官報に掲載 | 官報(国の機関紙)に掲載する方法。最も一般的。 |
| 電子公告 | 会社のホームページ等で公告する方法。URLが登記される。 |
| 日刊新聞紙 | 日本経済新聞等の日刊紙に掲載する方法。 |
会社成立の年月日
会社が設立登記をした日(=会社が法人として成立した日)です。
創業日や営業開始日とは異なる場合があります。
目的
会社が行う事業の内容です。
会社は登記された目的の範囲内で事業を行うことができます。許認可が必要な事業を行う場合は、その事業が目的に記載されている必要があります。
許認可と目的の記載が必要な主な事業
| 事業 | 目的への記載例 |
|---|---|
| 建設業 | 建築工事業、土木工事業など |
| 宅建業(不動産業) | 宅地建物取引業、不動産の売買・仲介など |
| 古物商 | 古物営業法に基づく古物商 |
| 飲食業 | 飲食店の経営 |
| 人材派遣業 | 労働者派遣事業 |
これから事業を始める場合は、許認可申請の前に目的の追加登記が必要になることがあります。
目的は箇条書きで記載されており、「前各号に附帯する一切の事業」といった包括的な記載が含まれることが一般的です。
発行可能株式総数
会社が発行できる株式の上限です。「授権株式数」とも呼ばれます。
実際にこの数まで株式を発行しているわけではなく、あくまで上限を定めたものです。
発行済株式の総数並びに種類及び数
実際に発行されている株式の数です。
種類株式(優先株式、劣後株式など)を発行している場合は、その種類と数も記載されます。
なお、ここに記載される株式数には自己株式(金庫株)が含まれている点に注意が必要です。登記簿上の発行済株式数=市場や株主が保有している株式数とは限りません。M&Aや出資を検討する際には、自己株式の有無を別途確認することをおすすめします。
資本金の額
会社の資本金です。
資本金は会社の信用力を示す指標の一つですが、必ずしも現在の会社の財務状況を反映しているわけではありません。
株式の譲渡制限に関する規定
株式を譲渡する際に、会社(取締役会や株主総会など)の承認が必要かどうかを定めた規定です。
「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない」などと記載されます。
この規定がある会社を「非公開会社」または「譲渡制限会社」といいます。中小企業のほとんどは非公開会社です。
役員に関する事項
取締役、代表取締役、監査役などの情報が記載されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資格 | 取締役、代表取締役、監査役など |
| 氏名 | 役員の氏名 |
| 住所 | 代表権を持つ役員の住所が登記される(他の役員は氏名のみ) |
| 就任日 | 役員に就任した日 |
| 退任日・辞任日等 | 役員を退任・辞任した日(履歴事項証明書の場合) |
役員欄の読み方のポイント
- 下線が引かれている部分は、その登記が抹消されたことを意味する(役員の場合は退任・辞任等が原因)
- 代表権を持つ役員の住所は登記される(株式会社の代表取締役、取締役会を置かない会社では取締役全員)
- 重任と記載されていれば、任期満了後に再選されたことを意味する
代表取締役等住所非表示措置について
2024年10月より、「代表取締役等住所非表示措置」という制度が始まりました。一定の要件を満たせば、登記事項証明書に代表取締役等の住所を市区町村までしか表示させないことが可能です。
プライバシー保護の観点から新設された制度であり、申出により利用できます。
取締役会設置会社に関する事項・監査役設置会社に関する事項
会社の機関設計に関する事項です。
取締役会を設置している場合は「取締役会設置会社」、監査役を設置している場合は「監査役設置会社」と記載されます。
その他にも、「監査等委員会設置会社」「指名委員会等設置会社」などの記載がされることがあります。
登記記録に関する事項
登記記録の作成日や、コンピュータ化に伴う移記の情報などが記載されます。
「平成○年○月○日移記」と記載されていれば、その日に紙の登記簿からコンピュータに移記されたことを意味します。
下線の意味
登記事項証明書で下線が引かれている部分は、その登記が抹消されたことを意味します。
- 役員欄で氏名に下線が引かれていれば → その役員は退任・辞任等により現在は役員ではない
- 商号に下線が引かれていれば → 商号変更があり、古い商号が抹消された
- 本店に下線が引かれていれば → 本店移転があり、旧所在地が抹消された
現在事項証明書では、下線が引かれた(抹消された)事項は記載されません。
登記簿の具体的な読み方(例)
例1:役員の就任・退任
役員に関する事項
取締役 山田太郎 令和3年6月25日就任
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取締役 佐藤花子 令和3年6月25日就任
取締役 鈴木一郎 令和5年6月28日就任
東京都新宿区○○一丁目2番3号
代表取締役 佐藤花子 令和3年6月25日就任
読み方:
- 山田太郎は取締役を退任している(下線が引かれている)
- 佐藤花子は取締役であり、代表取締役でもある
- 鈴木一郎は令和5年6月28日に取締役に就任した
- 代表取締役の佐藤花子の住所は東京都新宿区○○一丁目2番3号
例2:役員の重任
役員に関する事項
取締役 田中次郎 令和2年6月25日就任
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取締役 田中次郎 令和4年6月28日重任
読み方:
- 田中次郎は令和2年に取締役に就任し、任期満了後、令和4年6月に再選(重任)された
- 下線が引かれているのは最初の就任に関する記載で、現在有効なのは重任後の記載
例3:本店移転
本店 東京都渋谷区○○二丁目3番4号
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本店 東京都港区○○三丁目5番6号 令和5年7月1日移転
令和5年7月10日登記
読み方:
- 以前は東京都渋谷区に本店があった(下線で抹消)
- 令和5年7月1日に東京都港区へ本店を移転した
登記事項証明書の取得方法
法務局の窓口
最寄りの法務局で取得できます。全国どこの法務局でも、全国の会社の証明書を取得できます。
手数料:600円/通
オンライン請求(郵送受取)
「登記・供託オンライン申請システム」から請求し、郵送で受け取る方法です。
手数料:520円/通
オンライン請求(窓口受取)
オンラインで請求し、法務局の窓口で受け取る方法です。
手数料:500円/通
登記情報提供サービス
インターネットで登記情報をPDFで閲覧できるサービスです。証明書としての効力はありませんが、内容を確認するには便利です。
手数料:331円/件
よくあるご質問
Q. 取引先の登記簿を取得できますか?
はい。商業登記は公開されているため、誰でも手数料を払えば他社の登記事項証明書を取得できます。取引前の信用調査などに活用できます。
Q. 履歴事項証明書と現在事項証明書、どちらを取ればよいですか?
目的によって異なります。
- 履歴事項全部証明書:過去の変更履歴も確認したい場合(銀行への提出、補助金申請など多くの場面で求められる)
- 現在事項全部証明書:現在有効な情報のみでよい場合
迷った場合は履歴事項全部証明書を取得しておけば間違いありません。
Q. 役員の任期が切れているかどうかは、登記簿でわかりますか?
登記簿だけでは任期切れかどうかを判断するのは難しい場合があります。
任期は定款で定められており、登記簿には記載されません。役員の就任日から起算して、定款で定められた任期(最長10年)を経過していれば、任期満了となります。
任期が満了しているにもかかわらず登記がされていない場合、「みなし解散」の対象となるリスクがあります。
休眠会社への通知について
最後に役員変更登記をしてから12年以上経過している株式会社は、法務局から「まだ事業を廃止していない旨の届出」を求める通知が届きます。届出をしなければ、みなし解散として職権で解散登記がされてしまいます。
役員の任期管理は非常に重要です。定款で任期を10年に設定している会社は特に注意が必要です。
Q. 登記簿に記載されている住所と、実際の事務所の住所が違うのですが?
登記簿に記載されているのは「本店」の所在地であり、実際に業務を行っている事務所の住所とは異なる場合があります。
本店を移転した場合は、2週間以内に移転登記を行う必要があります。
Q. 資本金が大きければ信用できる会社ですか?
資本金は会社設立時や増資時の金額であり、現在の財務状況を直接示すものではありません。
資本金が大きくても経営が悪化している会社もありますし、資本金が小さくても健全な経営をしている会社もあります。取引先の信用調査には、登記事項証明書だけでなく、決算書や信用調査会社のレポートなども併せて確認することをおすすめします。
まとめ
商業登記簿(登記事項証明書)には、会社の基本情報が記載されています。
| 主な記載事項 | 確認できること |
|---|---|
| 商号・本店 | 会社名と所在地 |
| 目的 | 事業内容 |
| 資本金 | 資本金の額 |
| 役員 | 取締役、代表取締役、監査役など |
| 機関設計 | 取締役会・監査役の有無など |
登記事項証明書は誰でも取得でき、取引先の確認や各種手続に活用できます。
登記簿の見方がわからない場合や、登記手続についてご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件についてはご相談ください。