合同会社から株式会社への変更|手続き・費用・メリットを解説
「合同会社で設立したけど、株式会社に変えたい」——事業の成長に伴い、合同会社から株式会社への変更を検討する経営者は少なくありません。
合同会社から株式会社への変更は「組織変更」という手続きで行います。合同会社を解散して株式会社を新設するのではなく、同一の法人格を維持したまま会社形態を変更します。
本記事では、合同会社から株式会社への組織変更の手続き、費用、メリットを解説します。
合同会社から株式会社への変更とは
合同会社から株式会社への変更は、会社法に定める「組織変更」の手続きによって行います。
組織変更の特徴
- 法人格は継続:同一の法人として存続(法人番号も変わらない)
- 権利義務は引き継がれる:契約、許認可などは原則として継続
- 社員が株主に:合同会社の社員が株式会社の株主になる
変更するメリット
1. 社会的信用力の向上
株式会社は、合同会社よりも知名度・信用力が高いとされています。特に、BtoB取引や金融機関との取引では、株式会社の方が有利な場合があります。
2. 資金調達の選択肢が広がる
株式会社は、株式発行による資金調達が可能です。将来的な上場(IPO)も視野に入れられます。
3. 人材採用に有利
「株式会社」の方が、求職者にとって馴染みがあり、採用面で有利になることがあります。
4. 取引先からの要望への対応
取引先から「株式会社でないと取引できない」と言われるケースがあります。
変更するデメリット・注意点
1. 費用がかかる
組織変更には、登録免許税や官報公告費用、専門家報酬などがかかります。
2. 手続きに時間がかかる
債権者保護手続きに1か月以上かかるため、全体で2〜3か月程度必要です。
3. 役員の任期が発生
株式会社では、取締役に任期があります(原則2年、最長10年)。任期満了ごとに登記が必要になります。
4. 決算公告義務
株式会社は、決算公告が義務付けられています(官報掲載または電子公告)。
手続きの流れ
ステップ1:組織変更計画の作成
組織変更計画を作成します。計画には以下の事項を記載します。
- 組織変更後の株式会社の定款で定める事項
- 組織変更後の取締役の氏名
- 社員が取得する株式の数・種類
- 効力発生日
- その他法定事項
ステップ2:総社員の同意
組織変更には、総社員の同意が必要です(定款で別段の定めがある場合を除く)。
ステップ3:債権者保護手続き
債権者に対して、異議を述べる機会を与える手続きを行います。
官報公告 以下の事項を官報に公告します。
- 組織変更をする旨
- 債権者が一定期間内に異議を述べることができる旨
個別催告 知れている債権者には、個別に催告します。
※いわゆるダブル公告で、個別催告を省略する方法もあります。
異議申述期間 1か月以上の期間を設ける必要があります。
ステップ4:効力発生
組織変更計画で定めた効力発生日に、組織変更の効力が発生します。
合同会社は株式会社になり、社員は株主になります。
ステップ5:登記申請
効力発生日から2週間以内に、以下の登記を申請します。
- 合同会社の解散登記
- 株式会社の設立登記
必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 組織変更による株式会社設立登記申請書 | |
| 組織変更による合同会社解散登記申請書 | |
| 組織変更計画書 | |
| 定款 | 株式会社の定款 |
| 総社員の同意書 | |
| 公告をしたことを証する書面 | 官報のPDF |
| 催告をしたことを証する書面 | またはダブル公告 |
| 異議を述べた債権者はいない旨の証明書 | または弁済等をしたことを証する書面 |
| 取締役の就任承諾書 | |
| 取締役の印鑑証明書 | 取締役会非設置 |
| 資本金の額の計上に関する証明書 | |
| 委任状 | 代理人が申請する場合 |
登録免許税
| 登記の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| 合同会社の解散登記 | 3万円 |
| 株式会社の設立登記 | 資本金の0.15%(最低3万円)(注1、注2) |
(注1)課税標準金額の1,000分の1.5。ただし、登録免許税法施行規則に規定する額を超過する部分について1,000分の7
(注2)税額が3万円未満のときは3万円
例:組織変更前後の資本金100万円の場合
- 解散登記:3万円
- 設立登記:3万円(100万円×0.15%=1,500円だが、最低3万円)
- 合計:6万円
例:組織変更前後の資本金1,000万円の場合
- 解散登記:3万円
- 設立登記:3万円(1,000万円×0.15%=15,000円だが、最低3万円)
- 合計:6万円
例:組織変更前後の資本金5,000万円の場合
- 解散登記:3万円
- 設立登記:7.5万円(5,000万円×0.15%)
- 合計:10.5万円
費用の目安
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 登録免許税 | 6万円〜 |
| 官報公告費用 | 約3〜4万円 |
| 登記事項証明書等 | 数千円 |
| 司法書士報酬(依頼する場合) | 10万円〜20万円程度 |
| 合計 | 約20〜30万円程度 |
所要期間
組織変更には、債権者保護手続きに1か月以上かかるため、全体で2〜3か月程度必要です。
| 工程 | 期間 |
|---|---|
| 準備・計画作成 | 1〜2週間 |
| 債権者保護手続き | 1か月以上 |
| 登記申請・完了 | 1〜2週間 |
| 合計 | 2〜3か月程度 |
変更後に必要な届出
組織変更後、以下の届出が必要です。
| 届出先 | 届出内容 |
|---|---|
| 税務署 | 異動届出書(組織変更) |
| 都道府県税事務所 | 異動届出書 |
| 市区町村役場 | 異動届出書 |
| 年金事務所 | 適用事業所名称変更届 |
| 労働基準監督署 | 名称変更届 |
| ハローワーク | 事業主事業所各種変更届 |
| 取引銀行 | 届出事項の変更届、届出印変更 |
| 許認可の監督官庁 | 届出・届出書の変更届(許認可による) |
許認可の取扱い
建設業許可や宅建業免許などの許認可については、組織変更後も原則として継続します。
ただし、許認可によっては届出や手続きが必要な場合があります。事前に監督官庁に確認することをお勧めします。
組織変更と新設の違い
合同会社を株式会社にする方法として、「組織変更」のほかに、「合同会社を解散して新たに株式会社を設立する」方法もあります。
| 項目 | 組織変更 | 解散・新設 |
|---|---|---|
| 法人格 | 継続 | 断絶(別法人) |
| 法人番号 | 変わらない | 変わる |
| 契約 | 原則継続 | 契約し直しが必要 |
| 許認可 | 原則継続 | 取り直しが必要な場合あり |
| 費用 | 約20〜30万円 | 約30〜40万円以上 |
| 期間 | 2〜3か月 | 1〜2か月(ただし許認可取得に時間) |
通常は、組織変更の方がメリットが大きいです。
よくあるご質問
Q. 法人番号は変わりますか?
いいえ、法人番号は変わりません。同一の法人として継続するためです。
Q. 銀行口座はそのまま使えますか?
銀行への届出は必要ですが、同一の口座を引き続き使用できます。届出印の変更などが必要になる場合があります。
Q. 資本金を増やすことはできますか?
組織変更と同時に資本金を増加することも可能です。ただし、手続きが複雑になるためご相談ください。
Q. 合同会社のままではダメですか?
合同会社でも事業を行う上で法的な問題はありません。ただし、信用面や資金調達面で株式会社の方が有利な場合は、変更を検討する価値があります。
まとめ
合同会社から株式会社への変更は、「組織変更」の手続きで行います。
- 法人格は継続(法人番号も変わらない)
- 債権者保護手続きに1か月以上必要
- 費用は約20〜30万円程度
- 所要期間は2〜3か月程度
持分会社から株式会社への組織変更についてご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件についてはご相談ください。