会社の取締役や監査役に変更があった場合、法務局に「役員変更登記」を申請する必要があります。

役員の任期満了、辞任、就任、死亡、住所変更など、さまざまな場面で役員変更登記が必要になります。登記を怠ると過料(罰金みなみたいなイメージ)の対象になることもあるため、注意が必要です。

本記事では、役員変更登記が必要なケース、手続きの流れ、必要書類、費用をわかりやすく解説します。


役員変更登記とは

役員変更登記とは、会社の役員(取締役、代表取締役、監査役など)に変更があった場合に、法務局に届け出る登記手続きです。

会社の役員は登記事項であり、変更があった場合は2週間以内に登記を申請しなければなりません(会社法915条)。


役員変更登記が必要なケース

以下のような場合に、役員変更登記が必要です。

1. 任期満了・重任(再任)

取締役・監査役には任期があります。任期が満了した場合、退任の登記が必要です。

同じ人が再び選任された場合(重任)も、重任の登記が必要です。

取締役の任期

  • 原則:選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結時まで
  • 非公開会社:定款で最長10年まで伸長可能

監査役の任期

  • 原則:選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結時まで
  • 非公開会社:定款で最長10年まで伸長可能

2. 辞任

役員が自らの意思で辞める場合、辞任の登記が必要です。

辞任届を会社に提出することで、辞任の効力が発生します。

3. 就任(新任)

新たに役員を選任した場合、就任の登記が必要です。

株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)で選任し、本人が就任を承諾することで、就任の効力が発生します。

4. 解任

株主総会の決議によって役員を解任した場合、解任の登記が必要です。

※解任を選択するは注意が必要です。別の記事で詳しく記載します。

5. 死亡

役員が死亡した場合、死亡による退任の登記が必要です。

6. 資格喪失

役員が欠格事由に該当した場合、資格喪失による退任の登記が必要です。

7. 代表取締役の変更

代表取締役が交代した場合、代表取締役の変更登記が必要です。

代表取締役の住所も登記事項のため、住所が変わった場合も登記が必要です。

8. 役員の住所変更(代表取締役のみ)

代表取締役の住所は登記事項です。引っ越しなどで住所が変わった場合、住所変更の登記が必要です。

※取締役・監査役の住所は登記事項ではありません(代表取締役のみ)。


役員変更登記の手続きの流れ

ステップ1:株主総会の開催(必要な場合)

役員の選任・解任は、株主総会の決議が必要です。

  • 選任:普通決議(出席株主の議決権の過半数)
  • 解任:普通決議(ただし、監査役の解任は特別決議)

任期満了による退任のみの場合や、辞任・死亡の場合は、株主総会決議は不要です。

ステップ2:取締役会の開催(取締役会設置会社の場合)

代表取締役の選定は、取締役会設置会社では取締役会で行います。

ステップ3:就任承諾

新たに選任された役員は、就任を承諾する必要があります。就任承諾書を作成するか、株主総会の席上で承諾します。

ステップ4:必要書類の作成・収集

登記申請に必要な書類を準備します。

ステップ5:登記申請

本店所在地を管轄する法務局に、登記を申請します。

ステップ6:登記完了

通常申請から1週間〜10日程度で登記が完了します。


必要書類

役員変更の内容によって、必要書類が異なります。

任期満了・重任の場合

書類備考
役員変更登記申請書
株主総会議事録役員選任の決議
株主リスト
就任承諾書席上就任承諾の場合は不要
取締役会議事録代表取締役を選定した場合(取締役会設置会社)
定款任期を確認するため(提出を求められる場合)
委任状代理人が申請する場合

辞任の場合

書類備考
役員変更登記申請書
辞任届代表権のある方は届出印または個人実印+印鑑証明書
委任状代理人が申請する場合

代表取締役が辞任する場合は、辞任届に届出印を押印するか、個人実印を押印して印鑑証明書を添付します。

就任(新任)の場合

書類備考
役員変更登記申請書
株主総会議事録役員選任の決議
株主リスト
就任承諾書本人確認書類の添付が必要な場合あり
取締役会議事録代表取締役を選定した場合(取締役会設置会社)
印鑑証明書取締役会非設置会社の取締役
本人確認証明書取締役会設置会社の取締役(印鑑証明書以外の場合)
委任状代理人が申請する場合

死亡の場合

書類備考
役員変更登記申請書
死亡届または死亡の記載のある戸籍謄本、死亡診断書など
委任状代理人が申請する場合

代表取締役の住所変更の場合

書類備考
役員変更登記申請書
委任状代理人が申請する場合

住所変更の場合、添付書類は原則不要ですが、住民票の確認はした方が良いです。登記に必要ないことが根拠資料を確認しなくていいという理由にはなりません。


登録免許税

役員変更登記の登録免許税は以下のとおりです。

資本金の額登録免許税
1億円以下10,000円
1億円超30,000円

※役員の変更が複数あっても、同時に申請すれば1件分の登録免許税で済みます。


費用の目安

自分で手続きする場合

項目費用
登録免許税10,000円(資本金1億円以下)
登記事項証明書600円/通
印鑑証明書等数百円〜
合計約1〜2万円

司法書士に依頼する場合

項目費用
登録免許税10,000円(資本金1億円以下)
司法書士報酬2万円〜5万円程度
合計約3〜6万円

報酬は事務所や案件の内容によって異なります。


役員変更登記の期限と過料

役員変更登記は、変更があった日から2週間以内に申請する必要があります。

この期限を過ぎると、代表者に対して100万円以下の過料が科される可能性があります(会社法976条)。

実務上、少し遅れただけで必ず過料が科されるわけではありませんが、長期間放置していると過料の通知が届くことがあります。


任期管理の重要性

取締役の任期を10年に設定している会社では、任期満了を忘れがちです。

任期が満了しているのに登記をしないまま放置すると、以下のような問題が生じます。

  • 過料(罰金)の対象になる
  • みなし解散のリスク(12年以上登記がないと、解散したとみなされる)
  • 金融機関や取引先から信用を失う

定款で定めた任期を確認し、任期満了時期を会社で把握しておくことが重要です。稀に税理士先生に対して任期管理をしていないと責任追及される経営者の方もいらっしゃいますが、役員任期を管理するのは会社が行うのが大原則です。司法書士も活用してみてください。


みなし解散に注意

株式会社は、最後の登記から12年が経過すると、法務大臣の公告・通知を経て、みなし解散の登記がされることがあります。

役員の任期を10年に設定している会社でも、任期満了による重任登記を怠っていると、みなし解散の対象になる可能性があります。

みなし解散の登記がされると、会社を継続するための手続きが必要になり、費用も時間もかかります。定期的な登記を忘れないようにしましょう。


よくあるご質問

Q. 取締役が1人の会社で、その取締役が辞任できますか?

取締役会非設置会社で取締役が1人の場合、その取締役が辞任すると、取締役がいなくなってしまいます。

この場合、後任の取締役が就任するまで、辞任した取締役は権利義務を承継し、取締役としての責任を負い続けます(会社法346条)。

後任者を選任してから辞任するか、同時に後任者を選任する必要があります。

Q. 役員が亡くなった場合、誰が届出をしますか?

会社が登記を申請します。会社の代表者(代表取締役)が申請人となります。

代表取締役が亡くなった場合は、まず後任の代表取締役を選任し、その代表取締役が登記を申請します。

Q. 代表取締役の住所を非公開にできますか?

2024年10月から、一定の要件のもと、代表取締役の住所の一部を非表示にできる制度が始まりました。

現状、一般的なケースでは代表取締役の住所は公開されます。

Q. 役員変更と本店移転を同時に申請できますか?

はい、同時に申請できます。同じ管轄内であれば、1つの申請書でまとめて申請することも可能です。

管轄が異なる場合は、別々の申請書を作成し、経由申請となります。


まとめ

役員変更登記は、取締役・監査役の任期満了、辞任、就任、死亡などの場合に必要な手続きです。

変更があった日から2週間以内に申請する必要があり、怠ると過料の対象になることもあります。

特に、任期を10年に設定している会社は、任期満了を忘れがちです。任期を管理し、適切なタイミングで登記を行いましょう。

役員変更登記についてご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。書類作成から登記申請までサポートいたします。


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件についてはご相談ください。