組織変更とは?株式会社から持分会社への変更手続きを解説
前回は株式交付について解説しました。今回は、会社の種類を変更する「組織変更」について解説します。株式会社から合同会社などの持分会社へ、あるいは合同会社などの持分会社から株式会社へ変更する場合などに必要となる手続きです。
組織変更とは
組織変更とは、株式会社が持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)に、または持分会社が株式会社にその組織を変更することです。
会社の法人格は維持されたまま、会社の種類だけが変わります。解散・設立の手続きを経ることなく、スムーズに会社形態を変更できる点が特徴です。
なお、持分会社間での種類変更(例:合同会社から合名会社へ)は「組織変更」ではなく「種類の変更」と呼ばれ、より簡易な手続きで行うことができます。
また、特例有限会社が通常の株式会社に移行するのも「組織変更」ではなく、「定款変更による商号の変更」です。
組織変更が利用される場面
株式会社から合同会社への変更
- 株主総会の運営負担を軽減したい
- 決算公告の義務をなくしたい
- 役員の任期管理をなくしたい
- 少人数での機動的な経営を行いたい
- 会社の維持コストを下げたい
合同会社から株式会社への変更
- 株式発行による資金調達を行いたい
- 上場を目指したい
- 取引先や金融機関からの信用力を高めたい
- ストックオプションを導入したい
株式会社と合同会社の主な違い
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者の名称 | 株主 | 社員 |
| 出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 |
| 最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員の過半数(定款で変更可) |
| 業務執行 | 取締役 | 社員(業務執行社員) |
| 役員の任期 | あり(最長10年) | なし |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
| 定款認証 | 必要(設立時) | 不要 |
| 利益配分 | 出資比率に応じる | 定款で自由に定められる |
株式会社から持分会社への組織変更
手続きの流れ
ステップ1:組織変更計画の作成
組織変更計画を作成します。計画には以下の事項を定めます。
- 組織変更後の持分会社の種類(合名会社・合資会社・合同会社)
- 組織変更後の持分会社の目的、商号、本店所在地
- 組織変更後の持分会社の社員の氏名または名称、住所、出資の価額
- 社員が無限責任社員か有限責任社員かの別(合名会社・合資会社の場合)
- 効力発生日
- その他法務省令で定める事項
ステップ2:事前開示書類の備置
組織変更計画の内容などを記載した書類を本店に備え置きます。備置期間は、組織変更計画備置開始日から効力発生日後6か月を経過するまでです。
ステップ3:株主総会の承認
株主総会の特別決議ではなく、総株主の同意が必要です。
これは、組織変更により株主が持分会社の社員となり、会社の債務について直接責任を負う可能性が生じる(合名会社・合資会社の場合)など、株主の地位に重大な影響を与えるためです。合同会社への変更であっても、総株主の同意が必要とされています。
ステップ4:債権者保護手続き
官報への公告と、知れている債権者への個別催告を行います。異議申述期間は1か月以上です。
債権者が異議を述べた場合は、弁済、担保の提供、または信託などの対応が必要です。
ステップ5:効力発生
組織変更計画で定めた効力発生日に、組織変更の効力が生じます。株式会社は持分会社となり、株主は社員となります。
ステップ6:登記申請
効力発生日から2週間以内に、持分会社の設立登記と株式会社の解散登記を同時に申請します。本店所在地を管轄する法務局に申請します。
ステップ7:事後開示書類の備置
効力発生後、遅滞なく事後開示書類を本店に備え置きます。備置期間は効力発生日から6か月間です。
持分会社から株式会社への組織変更
手続きの流れ
ステップ1:組織変更計画の作成
組織変更計画を作成します。計画には以下の事項を定めます。
- 組織変更後の株式会社の目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数
- 組織変更後の株式会社の定款で定める事項
- 組織変更後の株式会社の取締役の氏名(他の役員を置く場合はその氏名も)
- 社員が取得する株式の数またはその算定方法
- 効力発生日
- その他法務省令で定める事項
ステップ2:総社員の同意
原則として、総社員の同意が必要です。
定款に別段の定めがある場合は、その定めに従います。
ステップ3:債権者保護手続き
官報への公告と、知れている債権者への個別催告を行います。異議申述期間は1か月以上です。
ステップ4:効力発生
組織変更計画で定めた効力発生日に、組織変更の効力が生じます。持分会社は株式会社となり、社員は株主となります。
ステップ5:登記申請
効力発生日から2週間以内に、株式会社の設立登記と持分会社の解散登記を同時に申請します。
ステップ6:事後開示書類の備置
効力発生後、遅滞なく事後開示書類を本店に備え置きます。
登記申請に必要な主な書類
株式会社から持分会社への組織変更
持分会社の設立登記
- 組織変更計画書
- 定款
- 総株主の同意書
- 株主リスト
- 債権者保護手続きを行ったことを証する書面
- 代表社員の就任承諾書
- 代表社員(法人の場合は職務執行者)の印鑑証明書
- 組織変更前の株式会社の登記事項証明書
株式会社の解散登記
- 設立登記と同時に申請
持分会社から株式会社への組織変更
株式会社の設立登記
- 組織変更計画書
- 定款
- 総社員の同意書(または定款の定めに基づく決定書)
- 債権者保護手続きを行ったことを証する書面
- 取締役等の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書(取締役会設置会社の場合は代表取締役の印鑑証明書)
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 組織変更前の持分会社の登記事項証明書
持分会社の解散登記
- 設立登記と同時に申請
組織変更と登録免許税
組織変更の登記には、登録免許税がかかります。
設立登記
- 株式会社への組織変更:資本金の額の1000分の1.5(最低3万円)
- 持分会社への組織変更:3万円
解散登記
- 3万円
ただし、組織変更前の会社の資本金の額を超えない部分については、設立登記の登録免許税が軽減されます(組織変更前の資本金を超える部分のみ1000分の1.5または1000分の7)。
持分会社間の種類変更との違い
持分会社間での種類変更(例:合同会社から合名会社へ)は、「組織変更」とは異なり、定款変更の手続きで行うことができます。
総社員の同意により定款を変更し、変更登記を申請するだけで足り、債権者保護手続きは原則として不要です(ただし、有限責任社員が無限責任社員になる変更を除く)。
スケジュールの目安
組織変更には債権者保護手続きが必須のため、準備開始から効力発生まで2〜3か月程度かかります。
- 組織変更計画の作成
- 事前開示書類の備置開始(株式会社からの組織変更の場合)
- 総株主または総社員の同意取得
- 官報公告の申込み
- 債権者への個別催告
- 異議申述期間の満了(1か月以上)
- 効力発生
- 登記申請(効力発生日から2週間以内)
特に、総株主の同意が必要な株式会社からの組織変更では、株主が多数いる場合に同意取得に時間がかかることがあります。
まとめ
組織変更は、会社の法人格を維持したまま、株式会社から持分会社へ、または持分会社から株式会社へ会社形態を変更できる制度です。
株式会社から持分会社への変更では総株主の同意が、持分会社から株式会社への変更では原則として総社員の同意が必要です。また、いずれの場合も債権者保護手続きが必要となります。
近年は、合同会社の認知度向上に伴い、株式会社から合同会社への組織変更を検討されるケースも増えています。会社形態の変更をご検討の際は、ぜひご相談ください。
なお、組織変更には税務上の論点もありますので、税理士への事前相談もお勧めいたします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件についてはご相談ください。