募集株式の現物出資|手続き・検査役調査・登記まで徹底解説
募集株式の発行に際して、金銭ではなく不動産や債権などの財産を出資することを「現物出資」といいます。
現物出資は、DES(デット・エクイティ・スワップ)や事業用資産の出資など、様々な場面で活用されますが、手続きが複雑で注意点も多い分野です。
本記事では、募集株式の現物出資について、法的な仕組みから検査役調査、登記手続きまで詳しく解説します。
第1章 現物出資の基礎
1-1 現物出資とは
現物出資とは、金銭以外の財産をもって株式の払込みに充てることです。
通常、株式の発行では金銭を払い込みますが、現物出資では不動産、動産、債権、有価証券、知的財産権などの財産を出資します。
1-2 現物出資が認められる場面
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 会社設立時 | 発起人が現物出資(会社法第28条) |
| 募集株式の発行時 | 引受人が現物出資(会社法第199条) |
| 募集新株予約権の行使時 | 新株予約権者が現物出資(会社法第236条第1項第3号) |
本記事では、募集株式の発行時の現物出資を中心に解説します。
1-3 現物出資の目的となる財産
現物出資の目的となる財産は、貸借対照表の資産の部に計上できる財産です。
| 出資できる財産 | 例 |
|---|---|
| 不動産 | 土地、建物 |
| 動産 | 機械、設備、車両、在庫 |
| 有価証券 | 株式、社債、投資信託 |
| 債権 | 貸付金、売掛金(DESで活用) |
| 知的財産権 | 特許権、商標権、著作権 |
| その他 | ゴルフ会員権、暗号資産など |
| 出資できない財産 | 理由 |
|---|---|
| 労務・信用 | 財産的価値の評価が困難 |
| 営業権(のれん)単体 | 分離して移転することが困難 |
1-4 現物出資のメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 資金調達なしで増資 | 現金がなくても資本を増やせる |
| DESによる財務改善 | 債務を資本に転換し、財務体質を改善 |
| 事業用資産の集約 | 個人所有の資産を会社に移転 |
| グループ再編 | 子会社株式を出資して持株会社化 |
1-5 現物出資のデメリット・リスク
| デメリット・リスク | 内容 |
|---|---|
| 手続きが複雑 | 検査役調査、有利発行判断など |
| 過大評価のリスク | 財産の価額が過大だと責任を負う |
| 税務上の問題 | 譲渡所得課税、時価評価など |
| 時間がかかる | 検査役調査は数か月かかることも |
第2章 募集事項の決定
2-1 募集事項
募集株式の発行に際して現物出資を行う場合、通常の募集事項に加えて、現物出資に関する事項を定める必要があります(会社法第199条第1項第3号)。
募集事項(会社法第199条第1項):
| 号 | 事項 | 内容 |
|---|---|---|
| 1号 | 募集株式の数 | 発行する株式の数 |
| 2号 | 払込金額またはその算定方法 | 1株あたりの払込金額 |
| 3号 | 現物出資に関する事項 | 現物出資をする場合に必要 |
| 4号 | 払込期日または払込期間 | いつまでに払い込むか |
| 5号 | 増加する資本金・資本準備金 | 資本金等の増加額 |
2-2 現物出資に関する事項
現物出資を行う場合、以下の事項を定めます(会社法第199条第1項第3号)。
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 現物出資をする者の氏名・名称 | 誰が現物出資をするか |
| 現物出資の目的たる財産の内容 | 何を出資するか(特定できる程度に記載) |
| 現物出資財産の価額 | その財産をいくらと評価するか |
| 割り当てる募集株式の数 | 現物出資者に何株割り当てるか |
2-3 決定機関
| 会社の類型 | 決定機関 |
|---|---|
| 公開会社 | 取締役会(会社法第201条第1項) |
| 非公開会社 | 株主総会の特別決議(会社法第199条第2項) |
| 有利発行の場合 | 株主総会の特別決議(会社法第199条第3項、第201条第1項) |
2-4 有利発行の判断
現物出資財産の価額が募集株式の払込金額の総額に満たない場合、有利発行に該当する可能性があります。
【例】
- 払込金額:1株1万円 × 100株 = 100万円
- 現物出資財産の時価:80万円
この場合、20万円分が有利発行となり、株主総会の特別決議が必要です。
第3章 検査役の調査
3-1 検査役調査とは
現物出資を行う場合、原則として裁判所が選任した検査役の調査を受ける必要があります(会社法第207条第1項)。
検査役は、現物出資財産の価額が相当であるかどうかを調査します。
3-2 検査役調査の趣旨
現物出資財産が過大に評価されると、以下の問題が生じます。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 資本の空洞化 | 実際の財産価値より資本金が多くなる |
| 既存株主の希薄化 | 不当に多くの株式が発行される |
| 債権者保護 | 資本金に見合う財産がない |
これらを防ぐため、検査役による価額調査が義務付けられています。
3-3 検査役の選任
検査役は、会社の申立てにより、裁判所が選任します(会社法第207条第1項)。
申立先
本店所在地を管轄する地方裁判所
申立書の記載事項
- 会社の商号、本店
- 募集事項
- 現物出資財産の内容・価額
- 検査役候補者(いる場合)
選任される検査役
通常、弁護士または公認会計士が選任されます。
3-4 検査役調査の内容
検査役は、以下の事項を調査します。
| 調査事項 | 内容 |
|---|---|
| 財産の存在 | 現物出資財産が実際に存在するか |
| 財産の帰属 | 出資者がその財産を所有しているか |
| 価額の相当性 | 募集事項で定めた価額が相当か |
| その他 | 手続きの適法性など |
3-5 検査役の報告
検査役は、調査の結果を裁判所に報告します(会社法第207条第4項)。
報告書には、現物出資財産の価額が相当か否かの意見が記載されます。
3-6 裁判所の決定
裁判所は、検査役の報告を受けて、以下のいずれかの決定をします。
| 決定 | 内容 |
|---|---|
| 価額が相当 | そのまま手続きを進められる |
| 価額が不当(過大) | 募集事項を変更する必要あり |
価額が不当とされた場合、会社は募集事項(現物出資財産の価額、割り当てる株式数)を変更するか、現物出資を断念することになります。
3-7 検査役調査の費用・期間
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 費用 | 50万円〜200万円程度(財産の内容・規模による) |
| 期間 | 1か月〜3か月程度 |
検査役調査は、費用・時間ともに負担が大きいため、後述の「検査役調査が不要な場合」に該当するかどうかを検討することが重要です。
第4章 検査役調査が不要な場合
以下のいずれかに該当する場合、検査役の調査は不要です(会社法第207条第9項)。
4-1 少額免除(500万円以下)
現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 価額の総額 | 500万円以下 |
| 判断時点 | 募集事項の決定時 |
最もよく利用される免除規定です。
4-2 市場価格のある有価証券
現物出資財産が市場価格のある有価証券であり、募集事項で定めた価額が市場価格を超えない場合
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象財産 | 上場株式、上場社債など |
| 価額 | 市場価格以下で評価 |
市場価格は、募集事項決定日の前日における最終価格(終値)などを基準にします。
4-3 弁護士等の証明
現物出資財産について、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人の証明(不動産については不動産鑑定士の鑑定評価も必要)を受けた場合
| 財産の種類 | 必要な証明 |
|---|---|
| 不動産以外 | 弁護士等の証明 |
| 不動産 | 弁護士等の証明 + 不動産鑑定士の鑑定評価 |
証明の内容
証明者は、以下の事項を証明します。
- 現物出資財産の価額が相当であること
- 現物出資財産の価額の評価方法
- 評価の根拠
証明者の責任
証明者は、証明が虚偽であった場合、会社・第三者に対して損害賠償責任を負います(会社法第213条の2)。
4-4 相当性が明らかな場合(DES)
会社に対する金銭債権を出資する場合で、当該債権の帳簿価額が募集事項で定めた価額を超えない場合
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象財産 | 会社に対する金銭債権(貸付金、売掛金など) |
| 価額 | 会社の帳簿価額以下で評価 |
| 弁済期 | 弁済期が到来しているものに限る |
**DES(デット・エクイティ・スワップ)**でよく利用される免除規定です。
4-5 免除規定のまとめ
| 免除規定 | 根拠条文 | よく使う場面 |
|---|---|---|
| 500万円以下 | 会社法第207条第9項第1号 | 少額の現物出資 |
| 市場価格のある有価証券 | 同第2号 | 上場株式の出資 |
| 弁護士等の証明 | 同第3号 | 不動産、非上場株式の出資 |
| DES(帳簿価額以下) | 同第4号 | 債務の資本化 |
第5章 DES(デット・エクイティ・スワップ)
5-1 DESとは
DES(Debt Equity Swap)とは、会社に対する債権を現物出資して株式を取得することです。
債権者の立場からすると、貸付金などの債権が株式に変わります。 会社の立場からすると、債務が消滅し、資本が増加します。
5-2 DESのメリット
| 立場 | メリット |
|---|---|
| 会社 | 債務が消滅、財務体質の改善、資金流出なし |
| 債権者(出資者) | 株式として回収可能性を残せる、株主として経営に関与 |
5-3 DESの手続き
DESは、**募集株式の発行(現物出資)**として行います。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 募集事項の決定(現物出資財産=会社に対する債権) |
| ② | 引受けの申込み・割当て(または総数引受契約) |
| ③ | 給付(債権の現物出資=混同により債権消滅) |
| ④ | 登記申請 |
5-4 DESと検査役調査
DESの場合、以下の要件を満たせば検査役調査は不要です(会社法第207条第9項第5号)。
| 要件 |
| 現物出資財産が会社に対する金銭債権である |
| 当該債権の弁済期が到来している |
| 募集事項で定めた価額が会社の帳簿価額を超えない |
帳簿価額とは
会社の帳簿(貸借対照表)に計上されている債務の額です。
| ケース | 帳簿価額 |
|---|---|
| 1,000万円の借入金(全額計上) | 1,000万円 |
| 1,000万円の借入金(貸倒引当金200万円計上) | 800万円 |
時価との関係
債権の時価(回収可能額)が帳簿価額より低い場合でも、帳簿価額以下で出資すれば検査役調査は不要です。
ただし、この場合、税務上の問題(債務消滅益の計上など)が生じる可能性があるため、税理士と協議が必要です。
5-5 DESの税務
DESには税務上の論点が多くあります。詳細は税理士にご相談ください。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 債務消滅益 | 債務の帳簿価額と時価の差額が益金に |
| 出資者の譲渡損益 | 債権の帳簿価額と株式の時価の差額 |
| 資本金等の額 | 税務上の資本金等の増加額 |
第6章 現物出資の手続きの流れ
6-1 手続きの全体像
① 募集事項の決定(取締役会または株主総会)
↓
② 【検査役調査が必要な場合】検査役選任の申立て
↓
③ 【検査役調査が必要な場合】検査役の調査・報告
↓
④ 引受けの申込み・割当て(または総数引受契約)
↓
⑤ 現物出資財産の給付
↓
⑥ 登記申請
6-2 現物出資財産の給付
現物出資者は、払込期日(または払込期間内)に、現物出資財産を会社に給付します(会社法第208条第2項)。
給付の方法
| 財産の種類 | 給付の方法 |
|---|---|
| 不動産 | 所有権移転登記(または引渡し+登記書類交付) |
| 動産 | 引渡し |
| 債権(対会社) | 混同により消滅(給付不要) |
| 債権(対第三者) | 債権譲渡(通知または承諾) |
| 株式(証券発行) | 株券の交付 |
| 株式(証券不発行) | 株主名簿の名義書換え |
| 知的財産権 | 移転登録 |
不動産の給付
不動産の現物出資では、払込期日までに所有権移転登記を完了するのが原則です。
ただし、実務上は、払込期日までに登記が間に合わないこともあるため、所有権移転登記に必要な書類を会社に交付することで給付とすることもあります。
この場合、登記手続きは払込期日後に行いますが、株式の効力は払込期日に発生します。
6-3 株式の発行
現物出資者は、給付をした日に株主となります(会社法第209条第1号)。
金銭出資の場合と同様、払込期日(または給付日)に株式の効力が発生します。
第7章 財産価額填補責任
7-1 財産価額填補責任とは
現物出資財産の実際の価額が、募集事項で定めた価額に著しく不足する場合、一定の者が会社に対して不足額を支払う義務を負います(会社法第213条第1項)。
これを「財産価額填補責任」といいます。
7-2 責任を負う者
| 責任を負う者 | 内容 |
|---|---|
| 現物出資者 | 不足額を支払う義務(無過失責任) |
| 取締役(業務執行者) | 不足額を支払う義務(過失責任) |
| 検査役調査を省略するための証明をした者 | 不足額を支払う義務(過失責任) |
7-3 現物出資者の責任
現物出資者は、不足額を支払う義務を負います(会社法第213条第1項第1号)。
この責任は無過失責任であり、現物出資者に過失がなくても責任を免れません。
7-4 取締役の責任
募集株式の発行に関する職務を行った取締役は、不足額を支払う義務を負います(会社法第213条第1項第2号)。
ただし、以下の場合は責任を免れます。
| 免責事由 |
| 職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合 |
| 検査役の調査を受けた場合 |
7-5 証明者の責任
検査役調査を省略するために弁護士等の証明を受けた場合、証明者も不足額を支払う義務を負います(会社法第213条の2)。
ただし、証明者が注意を怠らなかったことを証明した場合は責任を免れます。
第8章 登記手続き
8-1 登記事項
募集株式の発行により、以下の登記事項が変更になります。
| 登記事項 | 内容 |
|---|---|
| 発行済株式の総数 | 増加 |
| 資本金の額 | 増加 |
| (発行可能株式総数) | 増加する場合 |
現物出資の場合でも、登記事項は金銭出資の場合と同じです。
8-2 添付書類
共通で必要な書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 株主総会議事録 | 募集事項の決定(非公開会社の場合) |
| 取締役会議事録 | 募集事項の決定(公開会社の場合) |
| 株主リスト | 株主総会決議をした場合 |
| 募集株式の引受けの申込みを証する書面 | 申込書 |
| 払込みがあったことを証する書面 | 金銭出資がある場合 |
| 資本金の額の計上に関する証明書 | 資本金の計算 |
現物出資の場合に追加で必要な書類
| 書類 | 必要な場合 |
|---|---|
| 検査役の調査報告書 | 検査役調査を受けた場合 |
| 検査役の調査報告書に関する裁判所の決定書 | 同上 |
| 弁護士等の証明書(財産価額証明書) | 弁護士等の証明で検査役調査を省略した場合 |
| 不動産鑑定士の鑑定評価書 | 不動産の現物出資の場合 |
| 有価証券の市場価格を証する書面 | 市場価格のある有価証券の場合 |
| 現物出資財産の給付があったことを証する書面 | 全ての現物出資 |
8-3 現物出資財産の給付があったことを証する書面
現物出資財産の種類に応じて、以下の書面を添付します。
| 財産の種類 | 給付を証する書面 |
|---|---|
| 不動産 | 不動産の所有権移転登記に必要な書類の引渡しを受けたことを証する書面(代表取締役の証明書など) |
| 動産 | 引渡しを受けた旨の代表取締役の証明書 |
| 債権(対会社) | 代表取締役の証明書(混同により消滅) |
| 債権(対第三者) | 確定日付のある債権譲渡通知書の写し |
| 株式 | 株主名簿記載事項証明書、株券(発行会社の場合) |
8-4 財産価額証明書の記載例
【弁護士等の財産価額証明書の記載例】
財産価額証明書
当職は、○○株式会社(以下「会社」という。)の依頼により、
会社法第207条第9項第4号に基づき、下記の現物出資財産の価額
について証明する。
1. 現物出資財産の表示
(1) 財産の内容
土地
所 在 大阪市中央区○○町○丁目
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 ○○.○○平方メートル
(2) 現物出資者
住所 大阪市○○区○○町○番○号
氏名 山田太郎
(3) 募集事項で定めた価額
金3,000万円
2. 評価の方法
当該不動産について、○○不動産鑑定士による不動産鑑定評価
(令和○年○月○日付)を参照し、検討した。
3. 証明
上記現物出資財産の価額は、募集事項で定めた価額を下回らない
ことを証明する。
令和○年○月○日
大阪市○○区○○町○番○号
弁護士 ○○○○ 印
8-5 資本金の額の計上に関する証明書
現物出資の場合も、資本金の額の計上に関する証明書が必要です。
計算方法(会社計算規則第14条):
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 資本金等増加限度額 | 給付を受けた現物出資財産の価額 |
| 資本金の額 | 資本金等増加限度額の1/2以上(任意に定める) |
| 資本準備金の額 | 資本金等増加限度額 − 資本金の額 |
8-6 登録免許税
| 登記の種類 | 税額 |
|---|---|
| 資本金の増加 | 増加額の0.7%(最低3万円) |
現物出資の場合も、金銭出資の場合と同じです。
8-7 登記申請書の記載例
【登記申請書の記載例】
株式会社変更登記申請書
1. 会社法人等番号 1200-01-○○○○○○
1. 商号 ○○株式会社
1. 本店 大阪市中央区○○町○丁目○番○号
1. 登記の事由 募集株式発行
1. 登記すべき事項
令和○年○月○日変更
発行済株式の総数 ○○○株
資本金の額 金○○○○万円
1. 登録免許税 金○万円
1. 添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
募集株式の引受けの申込みを証する書面 1通
財産価額証明書 1通
不動産鑑定評価書 1通
給付があったことを証する書面 1通
資本金の額の計上に関する証明書 1通
上記のとおり登記の申請をする。
令和○年○月○日
大阪市中央区○○町○丁目○番○号
申請人 ○○株式会社
大阪市中央区○○町○丁目○番○号
代表取締役 ○○○○
大阪市○○区○○町○番○号
上記代理人 司法書士 ○○○○ 印
連絡先の電話番号 06-○○○○-○○○○
第9章 不動産の現物出資
9-1 不動産の現物出資の特徴
不動産の現物出資は、以下の点で注意が必要です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 検査役調査の省略 | 弁護士等の証明+不動産鑑定士の鑑定評価が必要 |
| 給付の方法 | 所有権移転登記が必要 |
| 税務 | 出資者に譲渡所得課税、会社に不動産取得税・登録免許税 |
9-2 検査役調査の省略
不動産の現物出資で検査役調査を省略するには、以下の2つの証明が必要です。
| 証明 | 証明者 |
|---|---|
| 財産価額証明書 | 弁護士、公認会計士、税理士等 |
| 不動産鑑定評価書 | 不動産鑑定士 |
弁護士等の証明だけでは足りず、不動産鑑定士の鑑定評価も必要です。
9-3 不動産鑑定評価
不動産鑑定士は、不動産の適正な時価を鑑定評価します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 鑑定評価額 | 不動産の時価 |
| 評価時点 | 募集事項決定日に近い時点 |
| 費用 | 20万円〜50万円程度(不動産による) |
| 期間 | 2週間〜1か月程度 |
9-4 所有権移転登記
不動産の現物出資では、出資者から会社への所有権移転登記が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登記原因 | 「令和○年○月○日現物出資」 |
| 登録免許税 | 固定資産評価額の2%(土地は1.5%の軽減あり) |
| 不動産取得税 | 固定資産評価額の3〜4% |
9-5 税務上の取扱い
| 立場 | 税務上の取扱い |
|---|---|
| 出資者(個人) | 譲渡所得課税(不動産を時価で譲渡したものとみなす) |
| 出資者(法人) | 譲渡損益の計上 |
| 会社 | 時価で資産を取得、不動産取得税・登録免許税がかかる |
不動産の現物出資は、税負担が大きくなる場合があるため、事前に税理士と相談することをおすすめします。
第10章 よくある質問(Q&A)
Q1. 現物出資と金銭出資を組み合わせることはできますか?
A. できます。同一の募集株式の発行において、一部の引受人は金銭出資、一部の引受人は現物出資とすることが可能です。
Q2. 現物出資財産の価額はどのように決めればよいですか?
A. 時価を基準に決定します。時価を超える価額で評価すると、財産価額填補責任のリスクがあります。また、時価を著しく下回る価額で評価すると、出資者に譲渡損が生じたり、会社に受贈益が生じたりする税務上の問題が生じる可能性があります。
Q3. 500万円以下であれば、どんな財産でも検査役調査は不要ですか?
A. はい、現物出資財産の価額の総額が500万円以下であれば、財産の種類を問わず検査役調査は不要です。ただし、価額が相当でなければ財産価額填補責任のリスクがあります。
Q4. DESをする場合、債権の評価額はいくらにすべきですか?
A. 会社の帳簿価額以下であれば検査役調査は不要です。実務上は、帳簿価額と同額で出資することが多いです。ただし、債権の回収可能性が低い場合(実質的に回収不能な場合)は、税務上、債務消滅益が認識される可能性があります。
Q5. 非公開会社でも取締役会で現物出資を決定できますか?
A. 非公開会社では、募集株式の発行は原則として株主総会の特別決議が必要です。ただし、株主総会から取締役会に委任することは可能です(会社法第200条第1項)。
当事務所のサポート
当事務所では、募集株式の現物出資に関する以下のサポートを提供しています。
対応業務
| サポート内容 |
| 現物出資のスキーム設計 |
| 募集事項の決定に関するアドバイス |
| 株主総会・取締役会議事録の作成 |
| 募集株式引受契約書の作成 |
| 検査役選任申立書の作成(必要な場合) |
| 税理士・弁護士・不動産鑑定士の紹介 |
| 変更登記申請 |
| 不動産の所有権移転登記(現物出資財産が不動産の場合) |
ご相談
募集株式の現物出資、DESをご検討の方は、お気軽にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件についてはご相談ください。 税務に関する事項については、税理士にご確認ください。