遺言書の書き方|種類・作成方法・費用をわかりやすく解説
遺言書の書き方|種類・作成方法・費用をわかりやすく解説
「自分が亡くなった後、財産をどう分けてほしいか伝えておきたい」「相続で家族が揉めないようにしたい」——そんな思いから、遺言書の作成を検討される方が増えています。
遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれ作成方法や効力が異なります。正しい形式で作成しないと、せっかくの遺言が無効になってしまうこともあります。
本記事では、遺言書の種類、書き方、作成時の注意点まで、わかりやすく解説します。
遺言書とは
遺言書とは、自分の死後に財産をどのように分けるか、誰に何を渡すかなどを書き記した書面です。法律で定められた形式に従って作成することで、法的な効力を持ちます。
遺言書がある場合、原則として遺言の内容に従って遺産が分配されます。遺産分割協議を行う必要がなく、相続手続きがスムーズに進みます。
遺言書を作成するメリット
1. 自分の意思を反映できる
法定相続分とは異なる割合で財産を分けたい場合や、特定の人に特定の財産を渡したい場合に、自分の意思を実現できます。
2. 相続トラブルを防げる
遺産の分け方が明確になるため、相続人同士の争いを防ぐ効果があります。
3. 相続手続きがスムーズになる
遺言書があれば、遺産分割協議が不要となり、相続登記や預貯金の解約手続きがスムーズに進みます。
4. 相続人以外にも財産を渡せる
遺言がなければ、法定相続人以外の人は遺産を受け取れません。お世話になった人や団体に財産を渡したい場合は、遺言書が必要です。
遺言書の種類
遺言書には主に3つの種類があります。
| 種類 | 概要 | 作成の手軽さ | 安全性 | 費用 |
|---|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 自分で手書きする | ◎ | △ | 無料〜 |
| 公正証書遺言 | 公証人が作成する | △ | ◎ | 数万円〜 |
| 秘密証書遺言 | 内容を秘密にできる | △ | △ | 1万1,000円 |
実務上、よく使われるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、遺言者が自分で全文を手書きする遺言書です。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言が有効となるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 全文を自書すること(財産目録を除く)
- 日付を自書すること(「令和○年○月○日」など特定できる日付)
- 氏名を自書すること
- 押印すること(認印でも可、実印が望ましい)
自筆証書遺言の書き方
遺言書
遺言者 山田太郎 は、次のとおり遺言する。
1. 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、妻 山田花子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
記
【土地】
所 在 東京都○○区○○町○丁目
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 150.00㎡
【建物】
所 在 東京都○○区○○町○丁目○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.00㎡
2階 40.00㎡
2. 遺言者は、遺言者の有する下記の預貯金を、長男 山田一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号1234567
3. 遺言者は、上記以外の遺言者の有する一切の財産を、妻 山田花子 に相続させる。
4. 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所 東京都○○区○○町○丁目○番○号
氏名 ○○○○
生年月日 昭和○年○月○日
令和○年○月○日
東京都○○区○○町○丁目○番○号
遺言者 山田太郎 ㊞
自筆証書遺言のメリット
- 費用がかからない(自分で作成すれば無料)
- いつでも作成できる(思い立ったときにすぐ書ける)
- 内容を秘密にできる(誰にも見せずに作成できる)
自筆証書遺言のデメリット
- 形式不備で無効になるリスクがある
- 紛失・破棄・改ざんのおそれがある
- 発見されないリスクがある
- 家庭裁判所の検認が必要(法務局保管制度を利用した場合を除く)
自筆証書遺言書保管制度
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が始まりました。
保管制度のメリット
- 紛失・改ざんを防げる
- 家庭裁判所の検認が不要になる
- 形式のチェックを受けられる(内容の有効性は審査対象外)
- 相続人が遺言書の有無を確認できる
保管制度の費用
- 保管申請:3,900円
- 遺言書情報証明書の交付:1,400円
- 遺言書の閲覧(モニター):1,400円
- 遺言書の閲覧(原本):1,700円
保管制度の注意点
法務局では、遺言書の形式(日付、署名、押印など)はチェックされますが、内容の有効性までは審査されません。遺言の内容に法的な問題がないかは、専門家に確認することをお勧めします。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。
公正証書遺言の作成手順
- 必要書類の準備
- 公証役場への連絡・相談
- 遺言内容の打ち合わせ
- 証人2人の手配
- 公証役場で遺言書作成
- 署名・押印
- 原本は公証役場で保管、正本・謄本を受け取り
公正証書遺言に必要な書類
- 遺言者の印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本
- 受遺者(相続人以外に財産を渡す場合)の住民票
- 財産に関する資料(不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の通帳コピーなど)
- 証人2人の氏名、住所、生年月日、職業がわかるもの
証人になれない人
以下の人は、公正証書遺言の証人になれません。
- 未成年者
- 推定相続人、受遺者およびその配偶者・直系血族
- 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記、使用人
証人が見つからない場合は、公証役場で紹介してもらえます(有料)。司法書士に依頼すれば、証人の手配も任せられます。
公正証書遺言の費用
公証人の手数料は、遺言で定める財産の価額によって決まります(2025年10月1日改正)。
| 財産の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円超〜3億円以下 | 49,000円 + 5,000万円ごとに15,000円加算 |
| 3億円超〜10億円以下 | 109,000円 + 5,000万円ごとに13,000円加算 |
| 10億円超 | 291,000円 + 5,000万円ごとに9,000円加算 |
※相続人・受遺者ごとに計算し、合算します。 ※財産の総額が1億円以下の場合は、「遺言加算」として13,000円が加算されます。 ※正本・謄本の交付手数料は、電子データで1通2,500円、紙で交付する場合は1枚につき300円です。 ※祭祀承継者の指定をする場合は、別途13,000円が加算されます。 ※原本が3枚を超える場合は、超える1枚ごとに300円が加算されます。
公正証書遺言のメリット
- 形式不備で無効になるリスクがない(公証人が作成)
- 原本が公証役場に保管される(紛失・改ざんの心配なし)
- 家庭裁判所の検認が不要
- 公証人が内容を確認するため、法的に有効な遺言になりやすい
公正証書遺言のデメリット
- 費用がかかる
- 証人2人が必要
- 公証役場に行く必要がある(出張も可能だが追加費用)
- 公証人との打ち合わせに時間がかかる
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 自分で手書き | 公証人 |
| 費用 | 無料〜(保管制度利用時3,900円) | 数万円〜 |
| 証人 | 不要 | 2人必要 |
| 保管 | 自己保管または法務局 | 公証役場 |
| 検認 | 必要(法務局保管を除く) | 不要 |
| 無効リスク | あり | ほぼなし |
| 秘密性 | 高い | 証人・公証人に内容を知られる |
確実性を重視するなら公正証書遺言、**手軽さを重視するなら自筆証書遺言(法務局保管制度利用)**がおすすめです。
遺言書作成時の注意点
1. 遺留分に配慮する
遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。遺留分を侵害する遺言も有効ですが、遺留分権利者から「遺留分侵害額請求」をされる可能性があります。
遺留分権利者は、配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
2. 財産を明確に特定する
「自宅」「預金」などの曖昧な表現ではなく、不動産は登記簿どおりに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで記載しましょう。
3. 予備的遺言を入れる
遺言で財産を渡す相手が、遺言者より先に亡くなる可能性もあります。その場合に備えて、「○○が遺言者より先に死亡した場合は、△△に相続させる」という予備的遺言を入れておくと安心です。
4. 遺言執行者を指定する
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを行う人です。遺言執行者を指定しておくと、相続手続きがスムーズに進みます。
5. 付言事項で思いを伝える
法的効力はありませんが、遺言書に「付言事項」として、遺言を書いた理由や家族への感謝の気持ちを記すことができます。相続人の納得感を高め、トラブル防止にも役立ちます。
遺言書で指定できること
遺言書で指定できる主な事項は以下のとおりです。
財産に関すること
- 相続分の指定
- 遺産分割方法の指定
- 特定の財産を特定の相続人に相続させる(特定財産承継遺言)
- 相続人以外への遺贈
- 信託の設定
身分に関すること
- 子の認知
- 未成年後見人の指定
- 未成年後見監督人の指定
その他
- 遺言執行者の指定
- 祭祀承継者の指定
- 相続人の廃除・廃除の取消し
- 生命保険金受取人の変更
遺言書の書き直し・撤回
遺言書は何度でも書き直すことができます。新しい遺言書を作成すれば、前の遺言書と矛盾する部分は撤回されたものとみなされます。
遺言書を完全に撤回したい場合は、遺言書を破棄するか、新たに「前の遺言を撤回する」という遺言書を作成します。
公正証書遺言は、公証役場に原本が保管されているため、手元の正本・謄本を破棄しても撤回したことにはなりません。公正証書遺言を撤回するには、新たな遺言書(自筆証書遺言でも可)を作成する必要があります。
よくあるご質問
Q. パソコンで作成した遺言書は有効ですか?
自筆証書遺言は、原則として全文を手書きする必要があります。パソコンで作成した遺言書は無効です。
ただし、財産目録については、パソコンで作成したものや、通帳のコピー、登記事項証明書を添付することができます。この場合、財産目録の各ページに署名・押印が必要です。
Q. 録音や動画の遺言は有効ですか?
法的に有効な遺言は、書面で作成する必要があります。録音や動画だけでは、遺言としての法的効力はありません。
ただし、書面の遺言書を補足する資料として、動画メッセージを残すことは可能です。
Q. 夫婦で一緒に1通の遺言書を作成できますか?
2人以上が同一の書面で遺言することはできません(共同遺言の禁止)。夫婦であっても、それぞれ別々の遺言書を作成する必要があります。
Q. 認知症でも遺言書は作成できますか?
遺言を作成するには、遺言能力(遺言の内容を理解し、その結果を認識できる能力)が必要です。認知症であっても、遺言能力があれば遺言書を作成できますが、後日、遺言能力の有無を巡って争いになることがあります。
認知症の方が遺言書を作成する場合は、公正証書遺言を選び、医師の診断書を取得しておくなど、遺言能力があったことを証明できるようにしておくことが重要です。
Q. 遺言書を見つけたらどうすればいい?
自筆証書遺言を発見した場合は、開封せずに、家庭裁判所で「検認」の手続きを受ける必要があります。勝手に開封すると、5万円以下の過料に処せられることがあります。
法務局に保管されている自筆証書遺言や、公正証書遺言は、検認不要です。
まとめ
遺言書は、自分の意思を実現し、相続トラブルを防ぐための有効な手段です。主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
自筆証書遺言は手軽に作成できますが、形式不備で無効になるリスクがあります。法務局の保管制度を利用すれば、検認不要で、紛失・改ざんも防げます。
公正証書遺言は、公証人が作成するため確実性が高く、検認も不要です。費用はかかりますが、大切な遺言を確実に残したい方にはおすすめです。
当事務所では、遺言書の作成サポートから、証人の手配、公証役場との調整まで対応しております。「どんな内容の遺言を書けばいいかわからない」という方も、お気軽にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件についてご相談ください。